おすすめの写真集-空の名前

空の名前

単行本 1999/12/10 高橋 健司(著)

 光琳社より1992年に出版され、1999年に角川書店で新装版として再発行された。
 雲や雨、風や季節の事象を写真や俳句などとともに解説している。
 16年以上、多くの人に読まれ続けている個性的なロングセラー書籍。
 出版当時、鎌倉で自分が開いた写真展に偶然立ち寄っていただき、高橋氏からいろいろなお話を伺ったことがある。気象観測のお仕事をされていたこともあって、かなり幅広い知識を持っていらっしゃったが、さらに文学や写真のことにも造詣が深い方であるということを知ることになった。
 「風にもいろいろな風がある・・・」「雲にもいろいろな雲がある・・・」「こんな和歌がある・・・」といった具合で、膨大な知識と映像が頭の中に収まっていると感じた。 
 それ以来、毎年、丁寧な年賀状をいただいている。長年、通信面が干支の形をした雲の写真になっている年賀状が続いた。ある年は午(うま)であったり、ある年は辰(たつ)であったりと、驚きと感心と楽しみがあふれ出す写真であったことを覚えている。

 季節ごとの空気や空はふと懐かしさを感じることがある。そして和歌や俳句の世界と深くかかわり、作者と共通の感動を持つことだろう。日頃忘れていた日本人らしい季節の感覚というものを静かに心の中に呼び起こしてくれる本だ。